漫画ネタバレ

さんかく窓の外側は夜10巻ネタバレ!「俺はアンタの…」感動の完結巻!

さんかく窓の外側は夜

『MAGAZINE BE×BOY』で連載していた人気漫画「さんかく窓の外側は夜」の10巻のネタバレです。

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さんかく窓の外側は夜
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【前巻のあらすじ】

除霊業を生業とする冷川理人(ひやかわ。りひと)の助手を務める三角康介(みかど・こうすけ)は、教団トップの”先生”のもとで呪い屋をしている女子高生・非浦英莉可(ひうら・えりか)と知り合い、彼女が付き人のヤクザ・逆木(さかき)とともに教団から逃げ出すことに協力します。

占い師の迎(むかえ)、捜査一課刑事の半澤(はんざわ)らの助けもあり、ふたりは教団から脱出できましたが、”先生”の呪いの力を放っておくことはできず、対策を立てようとしていました。

しかし、壮絶な過去を持つ冷川は彼らの考えが理解できず、直接大元をたたけばよい、とひとりで”先生”の家に向かい、逆に憎しみを利用され、捕らえられてしまいます。

冷川を救出しに三角と迎、逆木とエリカは”先生”の家に侵入しますが、異空間のような奇妙な家の中で三組に分かれてはぐれてしまいます。

迎は白い部屋に閉じ込められた幼い冷川と出会い、憎しみに身を任せようとする彼を止めようと説得します。

逆木とエリカはもはや完全な死者となったエリカの父親と遭遇し、消滅させました。

そして家の中で見つけた、昔住んでいた記憶のあるアパートのドアを開けた三角は、そこで、かつて自分と母親を捨てた父親である”先生”とひとり、対峙するのでした。

 

さんかく窓の外側は夜10巻ネタバレ

第53話

「僕が誰だか、知りたいかい?」

”先生”はそう三角に言いました。

三角が答えられないでいると、”先生”は裸足のまま玄関の三和土から土間に降り、三角の周りをゆっくりと歩いて回りながら、彼の名前を尋ねます。

「僕が誰かを知って、きみもできれば僕のいる地獄に落ちてきて欲しいな。ねえ、名前を教えてくれないか」

”先生”は背後から三角に迫り、耳元でささやきかけました。

「僕に──君の血のつながった父親にさ」

その言葉を耳にしたとき、三角の胸が みしり と音を立てました。

”先生”の家全体がまるで地震が起こっているかのように揺れます。

 

その地震を体感し、迎とともにいる幼い姿の冷川は、こう感想を口にしました。

「これ、知ってる。僕もしたよ、全部壊れちゃえって思った時」

 

三角は心臓を押さえ、その場に座り込みます。

「父親…?」

脳裏に、かつて逆木が”先生”について語ったある言葉が蘇りました。

『”先生”ってぇのは…簡単に言や、ただの人殺しだ』

三角の心臓がみしみしと音を立てます。

「どうだい、絶望の味は。壊れるかな、壊れてくれよ。ずっといなくなってほしかったんだ」

”先生”がうずくまる三角を見下ろしながら口にします。

(心臓が凍えそうだ)

三角は苦しんでいました。

(呪われた、のか? 違う。絶望? 憎しみ? 父さんが、俺の父親が、人殺しで、俺を、俺を…)

”先生”は幼い三角と妻を置いて家を出たあの日のことを口にしました。

「何度も後悔したよ、あの日を。夏の、蝉のやかましい暑い日だった。君はずっと泣き止まなくてうるさくて、ひどくわずらわしかった。あの日の僕の選択は間違ってた」

”先生”は平然と言います。

「殺せばよかったんだ、君を」

 

三角の心臓に衝撃があり、家全体がますますグラグラと揺れます。

逆木は隣にいるエリカに逃げることを提案しましたが、今逃げたらもうこの家には入れない、とエリカは拒否しました。

どうにか助かる方法を考え、逆木はエリカに尋ねました。

「お嬢さん。ここにうじゃうじゃいる死人の力を借りることはできねぇのか」

「できる。”先生”に使われている人たちはムリだけど、ただ”いる”人たちなら使える。その人たちと”あたしの中”にいる死人の人たち、全部つなげば皆のところまで道ができる」

エリカは目から血を流し、頬にひび割れを作り、”死”を体の表面に露出させて”力”を使いました。

「死と繋がっていない人はいないから、道は必ずつながる」

どしゃっと、フローリングの床に血まみれの足跡がつきました。まるで透明人間が歩いた後のように、血まみれの手足の跡だけが床を壁を伝い、家のあちこちへ進んでいきます。

そして血まみれの手のひらの跡が、三角と”先生”のもとへ、迎と幼い冷川のもとへ、家の外で待機する半澤のもとへとたどり着きました。

半澤は何かに頭を触れられたように感じ振り向きましたが、何も原因となるものは見当たりません。

「虫かなんかか?」

半澤は頭を掻きました。実はエリカが半澤の”力”を借りるために彼に触れたのですが、”信じない”半澤にその手は見えなかったのです。

半澤の”力”は血まみれの”死”の道を伝わり、三角と迎のもとへそれぞれ届きました。

迎とともにその”力”を感じた、幼い冷川がつぶやきます。

「…知ってる人だ、この人」

「知らないなんて言ったら怒られるぞ、お前。あー、新鮮な空気が吸えるー」

迎は冷川を”落とさない”ために使い切りそうだった自分の”力”が、この助けを得て、まだ持ちこらえられることに安堵しました。

「なぁ。”この人”がここからお前を出した後も、この部屋はずっとお前の中に残ってたんだな。今度こそ、ここから出よう。迎えが来るから」

しかし、幼い冷川は「嫌だ」と拒否します。

「この部屋のことを知られたら、みんな僕を嫌いになる…」

迎は両手で顔面を覆って言いました。

「そんなことない。そんな簡単に、俺らもあいつも、お前を切り捨てられない」

迎は両手で頭を抱え、涙目になりました。

「どう言ったら伝わるんだ。人が人を助けたいっていうのが、どういうことか…」

 

”先生”は、玄関の土間まで届いた”死”の道の、血まみれの手のひらの跡を見て言いました。

「これをやったのはあの子か? 色々教えてあげたのは僕なのに、恩知らずめ」

うずくまり続ける三角を見下ろして続けます。

「君もだ。彼女のおかげでキレイ好きに育ったみたいだけれど、君が受け継いでいるのは僕の汚れた血だよ。君は、僕の子だ」

そのとき、胸を押さえ続けながらも、三角が冷や汗まみれの顔を上げました。

「俺がお前と繋がってるのは血だけだ」

”先生”を睨みつけます。

「そんなのは俺の一部でしかない。そんなものよりもっと強いものが俺にはある」

三角は土間にスタンプされた血まみれの手のひらの跡に自分の手のひらを押し付け、エリカと繋がって上半身を持ち上げ、”先生”に強い視線を向けました。

「俺はお前になんか壊されない」

 

第54話

三角に睨みつけられた”先生”は、言いました。

「君が、僕に何を言えるっていうんだ。全部君が生まれたせいだ。僕ひとりだけなら、彼女の力は十分足りた。彼女といれば僕は汚いものを見ずに済んだ。でも、君が生まれて、僕ら二人分には彼女の力が足らなかったんだ。僕は間違えた。彼女のことを考えて、君を残していくんじゃなく、僕と彼女のことだけを考えなくちゃいけなかったんだ」

三角はかつて、母親が父親について語っていたことを思い出しました。

彼女は笑いながら言っていました。

『ふらっと出て行っちゃって、本当はどんな人だったのかも、もう、わからなくなっちゃった』

「そのことを母さんには…」

三角の問いに、”先生”は食い気味に答えました。

「言うわけないだろ、あんなキレイな人に。あれは、君と僕の問題なんだから」

「じゃあ、お前だって俺に何も言えないじゃないか」

三角はふらつきながらも立ち上がりました。

「お前の事情は知らない。でも母さんには、ずっと、心に大きな穴が空いたままだ」

三角は”先生”をまっすぐに見つめて叫びました。

「お前が逃げたせいだ」

「母さんに全部話して、やれること全部試すべきだった。それをせずに逃げやがって。あんたがそうしてたら、俺とお前のどっちがいようといまいと、母さんの中にあんな空虚はなかったのに。もう何をしたって埋められない」

「黙れ」

”先生”は絶叫しました。

「黙れ黙れ黙れ…ッ」

「俺は全部やる」

三角は吠えて、玄関の三和土に革靴を掛けて登り、”先生”の前に立ちはだかりました。

「やれることは全部試す。絶対に逃げない」

”先生”の目をまっすぐに見て、言います。

「母さんは俺を全部信じてくれた。俺は母さんの、信念の塊だ。絶対に壊れない」

”先生”は両手で頭を掴み、苦痛と久能に顔を歪めました。

「黙れよ。彼女は僕のものだったのに、お前が僕から奪ったんだ。お前が…」

「母さんは」

三角は強い口調で言いました。

「誰のものでもない、母さん自身のものだ」

憎しみのあまり思わず”先生”が三角に伸ばした手を、三角は掴みました。

”名前を教える”ことはその人の核心をさらけ出すことであり、”先生”や冷川、エリカにとって特別なことです。

「俺は三角康介」

そのことを知っていて、三角はあえて”先生”に名乗りました。

「お前を、壊して、直す」

”先生”の右手を力強くつかみ、三角は宣言します。

”先生”は抵抗しますが、彼の体を取り巻いてた黒いものはバラバラになり始め、どんどん形を失っていきます。

「やめろ、これは僕のすべてだ、すべてを糧にして作った僕の憎しみだ、これを壊したら、全部なくなる、力も、戒めも、全部。やめろ、耐えられるもんか、すべてを失って空っぽの中に…だけなんて」

先生の脳裏に、戒めによって消し去り続けた記憶が蘇ります。

「空っぽの中に彼女だけ…」

記憶の中の若い三角の母親は、明るい日差しの中、笑顔で彼に振り返っています。その腕の中には、

「置いてきた、彼女とお前だけ、なんて…」

安らかに眠る赤ん坊のころの三角が抱かれていたのでした。

 

「やめてくれ…」

”先生”の目に涙が浮かび、黒いものは彼の周りから消え去りました。

「壊れたら直す。失くしたらそのことを認める。そうやって、俺たちは生きていかなくちゃいけないんだよ」

三角もまた、頬に一筋の涙を流していました。

「苦しみや悲しみから目をそらし続けていたら、いつか本当に心が壊れてしまうんだ。…父さん」

 

まだ”先生”が三角家の一員だったころ、彼が若い妻にプレゼントを贈ったことがありました。近くの道具屋で見つけたという宝石箱です。彼は妻がずっと自分を想ってくれるように、というまじないをその宝石箱にかけていました。幼い息子もそれを欲しがりましたが、若い妻は「だめー」と簡単に断り、しかし、宝石箱の蓋についていた、アクセサリーにも加工できるという石を、大きくなったら息子にあげる約束をしました。

「こうちゃんを守ってくれますようにって、おまじないかけてよ」

妻は”先生”に頼み、”先生”はしぶしぶ、その石に人差し指を載せて、まじないを掛けました。

「…息子を守ってくれますように」

その石は今、ピアスに加工されて、三角の左耳にあるのでした。

 

「力が…」

すべてを失った”先生”はその場に崩れ落ち、わなわなと振るえる両手を見つめます。

三角は、そんな父を苦し気に見下ろしました。

「自分の苦しみにちゃんと向き合っていたら、こんなに大勢を不幸にしなくて済んだのに」

「無理だ…許してくれ、耐えられない…」

うっ伏して謝り続ける父親に、三角は告げました。

「…俺は、許すことも罰することもしないよ。ただ、今度こそ逃げないでほしい」

 

第55話

”先生”の力が失われたことで、空間にひびが入り始めました。

血まみれの死の道を通じて、エリカは康介に無事かどうか呼びかけます。

「先生の結界が崩れた。康介くんがやったの?」

三角が肯定すると、エリカは無表情で「そう」とつぶやき、礼を言いました。

気を取り直し、早く逃げよう、と、エリカは迎にも同じように呼びかけます。

迎はかろうじて返事をしますが、顔面をひび割れさせ、力が消耗しているのが明らかです。

ふたりの会話を聞いた三角は、迎が冷川とともにいることに驚いて声を上げます。

冷川はそんな三角の声を聞き「…誰?」と不思議そうです。

それを見た迎は、人が悪そうな笑みを浮かべて三角を呼びました。

「三角、ここに来て、早くこのバカぶん殴れ」

迎は冷川を連れて家を出ることは自分には無理だと告げ、冷川が落ちるのを引き留め続けるのが自分の力の限界だから、三角に来てほしい、と言いました。

三角は「わかった」と答えるものの、どうやって迎らのもとへ行けばいいのかわかりません。

エリカもどうすればいいかわからず困っていると、逆木がエリカに尋ねました。

「お嬢さん、この気味の悪いヤツを、どう使って今、話してるんですか」

エリカは戸惑いながら、”死”の道について答えます。

「死んだ人たちの身体がこの中でぐちゃぐちゃしてて…それにあたしの目と口をつないでるんだけど…」

「じゃあ、それ以外のものも、つなげるんじゃないですかね?」

逆木は言うと、自分の右手を血まみれの道の中に突っ込みました。

同時に三角の下にある死の道の中から血まみれの右手が出てきて、三角の足首を掴みます。

三角の悲鳴が道を通して響き、逆木は言いました。

「よし、掴んだ。引きずり込めそうな感じだな」

エリカは「そんな使い方思いつかなかった…」と逆木を呆れた目で見ています。

「これ何?」

三角の悲鳴じみた疑問に、逆木は薄く笑って答えました。

「死だよ。一度死んでみて分かったが、死ってのは平等で公正だ。優しいもんだな」

三角は死の道に引きずり込まれそうになった”先生”をこのままにしておいていいのかどうか迷いますが、逆木とエリカは一喝します。

「他人のことを考えてる場合か!」

「危ないのはあたしたちだよ。”先生”がこの異空間で何をしたかったかはわからないけれど…」

「発電所だよ」

三人の会話に割って入ったのは迎でした。

「冷川を閉じ込めて”炉”にして、原子炉みたいな動力源を作ろうとしてたんだ。先生の力が失われても、残念だが、このシステムはまだ動いてる」

迎は続けます。

「冷川の呪いがまだ効いているんだ。このままだとコイツは、ここで沈んで呪いの塊になる」

「それを、康介くんがどうにかしなきゃいけないの?」

エリカの問いに、迎は「三角じゃなきゃムリだろ」と答えます。

「俺らでは力が足りない?」

逆木の言葉に、迎はひび割れの大きくなった顔をいつものように皮肉気に引き攣らせ、笑いました。

「いやぁ…俺らに足りないのは力じゃないよ。愛、ってやつ?」

エリカと逆木は同時に呆れかえります。

「頭わいたか?」

逆木の言葉に、「呪いを打ち破るのはいつだって愛の力じゃねぇか」と迎は答えます。

逆木はやけくそになって三角に言いました。

「いくぞ、愛の戦士」

「おう!」

三角が応えると、血みどろの死の道からいくつもの血まみれの手が伸び、三角を中へと引きずり込みました。

逆木はエリカの案内に従い三角を迎と冷川のいる場所へと送り届けると、すぐさま迎を死の道に引きずり込み、ふたりのいる位置を交換しました。

迎は死の道に引きずり込まれながらも、三角の肩に向かって三角形の輪の形をした術を投げ、三角にしっかり引っかけました。

突然目の前に現れた三角を目にし、幼い冷川は拒否反応を示します。

「いやだ、だって、君はきっと受け入れてくれない…」

冷川は両手で頭を抱えると、床にできたひび割れの中に、吸い込まれるように倒れ込みます。

三角は慌てて、冷川を捕まえようと手を伸ばしました。

 

一方、”先生”の家の外で死の道から抜け脱し、エリカ、逆木と合流した迎は、すぐさまエリカを呼んで彼女の肩に、三角につけたのと同じ術を引っかけました。

「か、カラビナ、だ。落っこちないように三角につけてきたから、そのまま支えて!」

そのときエリカの身体がガクンと揺れ、隣の半澤が彼女の腕を掴みました。

途端、エリカは驚いて半澤の顔を眺めます。

「なんか、急にすごく平気になった…地に足がついたみたい」

迎はそんなエリカと半澤の様子を見て、両手でグッドサインを出しました。

「最高。半澤さん、正しいエネルギーの塊だね! 最後のハーケンだ。そのまま掴んでて!」

迎は三角が無事にここまで帰ってくることができるように、命綱をつないできたのです。

その綱の端を、迎はエリカと半澤に託したのでした。

「──後は、三角次第だ」

迎は厳しい表情でそう口にしました。

 

第56話

三角に冷川を託し、”先生”の家の外で待っているしかない現状に、エリカが不満を漏らしました。

「先生は力を失ってもう新しい呪いを作れないんだから、理人くんが先生の呪いの中にいるのなら、それを壊せば──」

「いや、そういう風には感じなかった」

迎は言うと、半澤に尋ねました。

「冷川に関係ある場所で、パネル張りで窓のない白っぽい部屋とか、ありませんでしたか」

半澤はすぐに気付きました。

「どこでそれを…!」

その場所は、幼い子供だった冷川が、教団に監禁されていた、まさにその部屋だったのです。

「理人くんはその部屋にいたの?」

エリカが尋ねると、迎は頷きます。エリカは顎に手を当てて考えました。

「”先生”はここに理人くんを閉じ込めて、大きな呪いの発電所にしようとしてた。そのために…」

「冷川を逃さないために、”先生”は、あいつが自分を呪うように仕向けたんだ」

迎がエリカの考えの後を続けます。

「冷川は、”先生”が作った呪いの中で、さらに自分を呪って閉じこもってるんだ。それを壊さなきゃ、外には出られない」

 

その頃、冷川とともに呪いの穴の中に落ちた三角は、自分たちふたりが見覚えのある部屋の中にいることに気づきました。

母親から呪いを受けて苦しんでいた、三角の友人の妻が、夫と住んでいた部屋でした。

娘を呪う母の恨みの声が部屋中に響き渡ります。

彼女の呪いは冷川が解いたはずなのに、どうしてここにあるのでしょう。

「この呪いは、よくなじみました。僕がよく言われていたことと似ているから…」

その時、幼い冷川が教団にいたころの世話役の女性がしばしば冷川に言い聞かせていた、滅私を強制する声が部屋に響き、やかましさに三角は頭を抱えました。

「黙れッ!!」

三角が叫ぶと、ふたりの女性の呪いの声は止み、冷川はきょとんとした顔で三角を眺めました。

「さあ、早くここを出よう」

三角の言葉に、冷川は首をかしげます。

「出るという言い方はおかしいです。”ここ”はずっとありましたよ」

ふたりは白いパネル張りの部屋の中に居ました。

部屋の中のキャビネットには家族写真が入った写真立てやマグカップ、本や皿などさまざまなものが並んでいます。

「いろんなものを持ち込んだから昔とは違うけど…よく思い出せないな」

三角はその部屋にあるものたちの、その異様な雰囲気を見て取り、悟ります。

「他人の作った呪いや憎しみを、この部屋に集めてたのか?」

「他の人が要らなくなっても、私には要るし、私は使えるから、集めたんです。いけないことでしたか?」

三角は、「一生出られない家」のあの黒髪の女性の言葉を思い出しました。

──憎しみだけを支えに何とか生きている人もいますよ──

「だって、あの人に、私の大切なものが盗られたから」

冷川は訴えます。そう、”先生”が、彼の大切にしていた憎しみを奪ってしまったから。

「大事にしてたんですよ。なのに、忘れそうになってしまって。絶対忘れるわけにはいかないのに、この────」

その時、パネル張りの壁に女性の死体が浮かび上がり、女性の声が響き渡りました。

『理人、あなたに母なんてものは、もういないのよ』

「憎しみを」

幼い冷川は、外見よりもさらに幼い幼児のように稚い調子で、三角に訴えました。

冷川の憎しみの源泉、それは、幼い子供であった彼を捨てた、母親だったのです。

「きっと、忘れかけてしまうのは、半澤さんのせいだと思うんですが…」

そこで冷川は、ほたほたと涙を流す三角を不思議そうに眺めました。

「どうして泣くんですか?」

「…必要、だからそうしたんだよな。憎しみを思い出したり、他人の憎しみを糧にしたり、そうして、力をつけなくちゃ、って…」

三角は袖で涙を拭うと、冷川の両肩に手を置き、問いかけました。

「でもそれって、まだ要るのか? 俺が隣にいるのに、まだ?」

冷川は、怯えた表情で三角を見上げます。

「アンタがまだ俺を閉じ込めるっていうなら俺は逃げるし、このまま沈んでみんな終わりにしたいって言うなら…いいよ、そうしても。でもそれだと」

三角は冷川の細い肩に縋り付き、涙を流しながら言葉を続けます。

「俺はアンタの運命ではなかった、ってことだよな」

その言葉を聞いた冷川は、涙を浮かべて唇をかみしめます。

「でも、俺はまだちゃんと聞いてないんだ。アンタは本当は、何を望んでるんだ? 教えてくれよ、それが、俺がアンタにしてやりたいことと同じなら」

三角は涙を浮かべ、冷川の目を見つめました。二人の手のひらが床で重なり合います。

「俺はアンタの、運命だよ。絶対」

冷川は、震えながら三角の腕を掴み、言いました。

「ほ、本当は、ここにいるのは嫌なんだ。みんなは外が危ないっていうけれど、私にはわからない。私は…二度と自分に、同じことを繰り返させない、と思ったけれど…どうしたらいいか、わからない。私は、君に知って欲しいけど、怖くて、君には知られたくなくて…」

三角は先を促すように、小さく頷きました。「…うん」

「私、私は…君に、君と、一緒にいたいんだ。君の、そばに、いさせてほしい…」

大粒の涙をこぼしながら顔を上げた時、冷川は、現在の大人の姿になっていました。

三角はにらみつけるような強い視線で、自分よりも目線の高くなった冷川の顔を見上げ、彼の手を強く握りしめて、にやりと微笑みました。

「そうだよな。アンタ、おれのそばにいたら、怖くなくなるぜ」

かつての自分が放ったのと同じ台詞を口にした三角を、冷川は茫然と眺めました。

 

第57話(最終話)

「でも、私にはここを壊すことなんて──」

できない、と冷川が続けようとしたとき、ふたりは既に、何の異常もないただの”家”の中に戻っていました。

冷川は周りを見渡して驚きます。

「戻った…?」

三角は疲れた、と繰り返しながら冷川の手を握ったまま立ち上がると、外に出よう、と冷川を促します。

彼に連れられて家を出る直前、冷川が振り返ると、家の奥の部屋で、未だうずくまったままの”先生”の姿が、彼の視界に入りました。

 

”先生”の家の前では、エリカと逆木、迎、半澤の四人が待っていました。

三角が笑って「お疲れ」と口にすると、エリカが心配して駆け寄ってきます。

「大丈夫?」

「あっ、はい」

冷川が応えると、エリカは「よかった」と全身から力を抜いて安心します。

先生は多分生きている、と半澤に伝えると、彼は耳からスマートフォンを放し、「これから二課が来るってよ」と皆に報告しました。

脱税容疑で”先生”の家に家宅捜索に入ることが決まったようです。

迎は、冷川がじっと自分を見つめているのに気づき、「何だよ?」と口元を歪めました。

「君は……本当に我慢強い人ですね……」

冷川の脳裏には、あの部屋で迎と交わした会話が蘇っていました。

迎は「ケンカ吹っ掛けてんのか?」と肩を怒らせますが、冷川は目を伏せ、初めて彼に礼を言いました。

「…ありがとう。私と、向かい合ってくれて」

迎は眉をひそめてその言葉を聞くと、ふっと息を吐いてから、冷川の腕を拳で殴りました。

「はははっ! どーいたしまして!」

痛い、とつぶやく冷川と、それを見て笑う三角の様子を眺め、半澤は、ふたりのかたく握り締め合った拳を目にしました。

かつて、自分が教団から冷川を連れ出したとき、彼も今の三角と同じように、冷川の手を引いていたのです。

半澤は無言で、冷川の肩に音を立てるほどの勢いで手を掛けました。

「…冷川。いや、理人」

その呼び方に、冷川は、教団から助け出されたばかりの頃、半澤は自分のことをそう呼んでいた、と思い出しました。

 

あの頃、冷川がいた養護施設に、半澤はたびたびやってきて、冷川の昔の話を聞いていきました。でも、半澤といると、冷川は、昔のことをどんどん忘れて行ってしまうのです。絶対に忘れない、と強く思ったことでさえ。

半澤はそれを聞くと、こう言いました。

『いいよ。忘れられるんなら、そのほうがいいんだ』

 

「…すまない」

と、あの頃と比べて年を重ねた半澤は、冷川に言うのでした。

「俺は、お前を本当には、救ってやれてなかったな。もっとお節介にずけずけ口出ししてりゃ、こんな風には…」

「いいえ」

冷川は、はっきりと答えました。

「私を助け出してくれたのはあなたです。あなたはあれからも、ずっと…」

養護施設にいて、いくら食べてもお腹が減った成長期にも、大人になって施設を出た後も、ずっと、半澤は冷川を気にかけて、訪ねてきてくれていました。

「ずっと、私を助け続けてくれていたのに、私はそれを、理解できていなかった…」

珍しく目を伏せてすまなそうにする冷川を見て、半澤はきゅっと唇をかみしめました。

乱暴に冷川の首に腕を回して、言います。

「いつからでも、遅すぎるなんてことはねぇよ!」

自分より高い位置にある冷川の頭を腕づくで自分の口元に寄せて、半澤は彼に、今晩家に来るよう言いました。

「前から言ってるがな、床に人間の形のシミがある部屋は人が住む場所とは言わねぇんだよ」

 

半澤と冷川の様子を微笑みながら見ている三角に、エリカは尋ねました。

「先生の力、どうやって消したの? あたしでも理人くんでもムリだし、半澤さんほどキレイな人でも、やっぱりムリだと思う。あんな憎しみ、私たちにはどうにもできない」

三角は静かな目で、落ち着いたら話す、とだけ伝えました。

「そのことを最初に伝えなきゃいけない人は、他にいるから」

エリカは首をかしげながらも頷きました。

逆木が「疲れた!」と声を出していい、一同は解散する流れに入りました。

エリカは母親に連絡し、逆木と三人で食事に行くと言います。

迎は人間の善の面に触れるために、誘われている飲み会をいくつかハシゴするつもりだ、と三角に言いました。

さっぱりした表情になった三角は、冷川の名を呼ぶと、ジーンズのポケットから冷川と交わした契約書の紙を取り出し、たかだかと掲げて全員の前で破り捨てました。

冷川の悲鳴が響き、エリカと迎は驚き、逆木と半澤は首を傾げています。

三角は、これまでになくさっぱりとした顔つきでほほ笑むと、全員に向かって「じゃ、また!」と伝えました。

「次はゆっくり飯でも食おーぜ!」

茫然とする冷川以外の全員が、意味ありげに笑ってそれに応えました。

 

三角が帰宅すると、リビングのテレビでは”先生”の宗教法人に関連するニュースが流れ、三角の母が椅子に座ってそれを眺めていました。

三角が「ただいま」と隣の椅子に座ると、母は「おかえり」と応え、三角の肩にぽんと頭を預けました。

「……お父さんのこと、聞きたい?」

三角は答えました。

「…母さんが、話したいなら、いつでも言ってよ。俺も、言いたいことがあるし…」

 

朝、三角が『物件鑑定・特殊清掃 COOLEAN』の事務所に出勤すると、冷川が驚いた顔で出迎えました。

「君は、もう来ないのかと…」

三角が何で、と尋ねると、冷川は両手をもじもじさせて、「契約が…」とつぶやきます。

契約で縛られなくなった三角が、なぜ自分の近くに居続けようとするのか、冷川は理解できない様子です。

三角が契約書を燃やして捨てたというと、悲しそうに顔を伏せます。

「あれはもう必要ないし、もともと必要もなかっただろ、ずっと。アンタだって、もうわかってるんじゃねぇの」

冷川は言葉少なに頷きます。

「…あの、昨日のことで質問が」

冷川の言葉に、三角は「あぁ。あの呪いを壊した方法?」と問い返します。

「はい。あの憎しみの核は…私が長い間持ち続けていたものです。それを彼が利用した。私は自分でも、あれは壊せないものだと…」

「俺は何もしてないよ。消したのはアンタだ」

冷川の言葉を遮って、三角は答えました。

「あそこには、もう何もなかったんじゃないかな。あるのは残骸だけでさ。…俺には、そう見えたよ」

三角は続けます。

「あそこにも、アンタの中にも、もう憎しみはなくなってて、だから、俺たちは外に出られたんだ」

冷川はその言葉に目を見開きました。

「だからって、アンタの過去が無くなったわけじゃないしけど。…俺は嬉しいよ、少なくとも」

「しかし…」

冷川は両手を顔の周りでふわふわさせて、不安を訴えました。

「心に何か、空き部屋ができてしまったような…」

その言葉は、三角にある女性の言葉を思い出させました。

──あなたは憎しみの代わりになれるの?──

三角は笑いそうになりながら、冷川に提案しました。

「じゃあ、他のものでその空き部屋を埋めればいいだろ!」

「具体例を提示してください」

怪訝な顔の冷川に、三角は「昨日の自分の台詞覚えてないのかよ!」とツッコみ、冷川の肩を軽くたたきました。

「ゆっくり考えればいいよ。俺は隣にいるからさ」

そしてふたりは、休業中にたまった仕事を片付けるべく動き出しました。

冷川は半澤に言われて引っ越しも控えているので、やることは山積みです。

「まったく、アンタ、俺に、自分のそばにいれば怖くなくなるなんて偉そうに言って、全然そうならねーよな」

三角の文句に、冷川は言い返しました。

「…君も同じことを、私に言いませんでしたっけ?」

三角は冷川を無視して声を張り上げました。

「さぁーて、仕事を始めるか!」

 

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さんかく窓の外側は夜は全巻無料で読める?最短最速安全に読む方法まとめ

さんかく窓の外側は夜
さんかく窓の外側は夜を全巻無料で一気読みできるお得な配信サイトの調査まとめクロフネコミックスで連載していた「さんかく窓の外側は夜」を全巻無料で一気読みできるお得な配信サイトの調査をまとめました。 さんかく...

さんかく窓の外側は夜10巻感想

長く続いた連載もひと段落し、冷川と三角の運命のふたりの話も一区切りつきましたね。

人と違う能力があるばかりに過酷な人生を強いられてきた冷川も、エリカちゃんも、これからは誰もが感じたことのある幸せをたっぷり味わってほしいです。

しかし、ふたりとその周辺の不可思議な現象はまだまだ続くらしく、掲載誌には「さんかく窓の外側は夜」の「その後」の話が連載され、コミックスの発売も決まっています(2021年12月20日)。

まさかこれからもふたりの活躍が見られるとは。発売が楽しみですね!

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